ほんの話_ストレスの生物学

 

【概要】
 
■HSP70ファミリー
 
HSP70(HSP72)
               細胞質/核/核小体に存在する。
               変性プレリボソーム結合、
               膜を介したタンパク質輸送、
               細胞周期依存的発現
 
HSP73(HSC73/クラスリンアンコーディングATPアーゼ
               細胞質/核/核小体に存在する。
               被覆商法クラスリンケージの分解
               膜を介したタンパク質輸送
 
HSPの働き(HSP70に限らない)
 
・常時のHSPはさいぼうがタンパク質を生合成する過程で、
 合成途中のペプチドに結合し、そのペプチドが正常に折りたたまれることを助ける。
 
・また、HSPは、
 ①転写因子やタンパク質をリン酸化する酵素プロテインキナーゼ:PK)等のタンパクの活性化
 ②タンパク質の分解
 ③ステロイドホルモンの活性化
 ④抗原提示のシグナルタンパク質
 
■分子シャペロンとしてのHSP70
 
・タンパク質の合成がされる際に、新しく合成されたポリペプチド鎖は、合成の進行に伴って
 αへリックスとβシートのような2次元構造を形成し、それらがパッキングされてある程度の
 3次構造が作られることがわかっている。
 
・この時の構造をフォールディング中間体という。
 
・フォールディング中間体はタンパク質が特定の機能を発揮できる正常な形にはなっていない。
   まだ、パッキングが不完全なためにに本来ならば分子内に折りたたまれるべき疎水性の領域などが、
 分子表面に露出してしまい、タンパク質中間体同士がそれぞれ集まって凝集体(アグリゲート)を
 作りやすい状況にある。HSP70はこのような疎水性の部分に結合して、それらが凝集するのを防ぐ。
 
※ストレス状況下においてはタンパク質の3次構造が破壊され、疎水性領域が分子の外側に露出し、
フォールディング中間体を形成する。
 
■抗アポトーシス作用をもつHSP70
 
①HSP70とユビキチンプロテアソーム(※分解酵素)は
変性タンパク質の再生や処理を行ってアポトーシスを防ぐ。
 
②HSP70はミトコンドリアを中心とするアポトーシス経路を抑制する
ミトコンドリアの膜電位と形態の保持(チトクロムcなどアポトーシス誘導因子の抑制)
・JNKの抑制(アポトーシス関与のシグナル伝達に関与する酵素の活性を抑制)
アポトーシスプロテアーゼ活性化因子の抑制、ガスパーゼの抑制(構造変化の抑制)
 
熱ショック転写因子(HSF)と熱ショックエレメント(HSE)
 
・熱ショック転写因子(HSF):ストレス刺激に応答して、
   活性化しHSP遺伝子の働きを調整する領域(HSE)に特異的に結合する。
・熱ショックエレメント(HSE):  HSP遺伝子の働きを調整する領域
 
・HSF1は平常時HSP70と結合して存在する。
 
・熱ショックなど何らかのトリガーによって、HSP70から解離し、それ自身で3量体を作る。
・その後核へと移行し、HSEに結合することが明らかになっている。
 
・核への移行とHSEに結合したHSF1がHSEから解離するために、
 HSF1にリン酸基を付加する酵素であるタンパク質リン酸化酵素(PK)が働く。
   リン酸化反応がHSPタンパク質合成誘導の制御において、重要な役割を果たすことが示唆される。
 
 
 
【応用可能箇所】
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